ピッチャーが一流になるためには、単にスピードのある投球だけでは不十分です。確かに速球は打者を圧倒する要素の一つであり、ファンやスカウトに注目されやすいものです。しかし、長期的に成功するためには、キレとコントロールが重要な役割を果たします。
キレとは、球の変化の鋭さや、打者にとって予想外の動きを指します。たとえ球速がそれほど速くなくても、球の軌道が突然変化するようなピッチングができれば、打者にとっては非常に打ちづらいものとなります。スピードだけに頼ると、プロレベルでは打者に対応されやすく、長期的な成功は難しいことがあります。
一方で、キレのある変化球を持つピッチャーは、打者にタイミングを狂わせたり、ミスショットを誘発することができ、結果的に打たれにくいピッチャーとなるのです。加えて、コントロールもまた一流のピッチャーにとって不可欠な要素です。コントロールとは、投げた球を狙った場所に正確に投げ込む能力のことを指します。
スピードがある球でも、制球が乱れると打たれるリスクが高まります。打者はピッチャーの制球が悪ければ、ボール球を見極めて四球を選ぶことができるため、結果的にピッチャーの疲労が早まったり、ピンチを招く原因となります。一方で、コントロールが優れているピッチャーは、ストライクゾーンの隅を狙って投げ分けることができ、打者にプレッシャーをかけ続けることができます。これにより、打者はストライクを取られる恐怖から、普段なら手を出さない球にも対応せざるを得なくなり、結果的に凡打や三振を生み出す可能性が高まります。
現代の野球においては、スピードガンに表示される数字が注目されがちですが、一流のピッチャーとしてのキャリアを築くには、単なる球速に頼らない技術が必要です。
グレッグ・マダックスのようなピッチャーは、球速が驚異的ではなかったものの、コントロールとキレを武器に長年にわたりメジャーリーグで成功を収めました。彼はストライクゾーンの端を絶妙に突くことで、打者を打ち取る技術を持っており、打者はその絶妙な制球に手を焼いていました。このように、キレのある変化球と正確なコントロールがあれば、たとえ速球派でなくても、一流の投手として成功することが可能です。
さらに、キレとコントロールが優れているピッチャーは、相手打者の弱点を突くことができます。打者は各々異なる特徴を持っており、速球に強い打者もいれば、変化球に弱い打者もいます。ピッチャーが優れたコントロールを持っていると、相手打者の弱点に合わせて効果的な球種を投げ分けることができ、打者を圧倒することができます。 これは特に試合終盤や重要な局面でのピッチングにおいて、非常に大きなアドバンテージとなります。結果的に、チームに貢献するピッチャーとなり、勝利に直結するプレーを提供することができるのです。